ヨーロッパユニバーサリスIII(PC,Paradox Interactive)

 洋ゲーの超巨大歴史シミュレーション。「信長の野望全世界版」みたいな。ただし、規模は段違い。
 1399〜1820年まで、英仏百年戦争のまっただ中から、フランス革命ナポレオン戦争終結までの420年間、約1400のエリアに分かれた全世界を、1日単位でシミュレートするという、間違いなく史上最大スケールのシミュレーションゲームである。
 オスマントルコの盛衰や、宗教改革によるドイツの分裂と三十年戦争アメリカへの植民、インカ帝国コンキスタドール、オランダの東南アジア植民、中国の明清交代、ティムールの大帝国とその分裂。様々な歴史的トピックが同時並行的に進んで行く。
 このゲームの面白いところは、ほんの少し、現実の歴史と異なった事態が発生したことで、その後の歴史の展開が一変してしまうところだ。コロンブスよりも先に英仏が北米に植民地を作っていたら? オスマントルコがウィーン攻略に成功していたら? カルマル同盟が分裂せずデンマークがヨーロッパ最強国家となったら? 清の攻撃を明が守りきったら? いくつもの予想外の展開が、全世界のあり方に影響を与えていくシステムなので、どの一国をプレイしていても、非常に楽しめる。――そう、このゲームは全世界に存在する数百の国家のどれでも選んでプレイできるのである。フランスでも、イギリスでも、日本でも、チェロキーでも(当時のチェロキーが「国」で括っていいのかは疑問かもしれないが)。
 あまりにファクターが多くて複雑なので、最初は練習がてら、グランドキャンペーン(1399年スタート)フランスでプレイしてみた。
 15世紀初頭のフランスは(少なくともこのゲームでは)かなり悲惨である。現在のフランス国内には、百年戦争前半戦の結果、イングランドが領地を確保しており、属国とはいえ、各伯爵領やブルゴーニュ公国が割拠している。いつ攻めてくるか分からないイギリスに備えつつ、国内の統一を目指すところから始まる。幸い、首都のパリは経済拠点として非常に優秀なので諸侯国に貢物を贈って平和的に併合したり、軍備を整えて武力併合したりしつつ、最終的には、フランス・カスティーリャ同盟対イングランドブルゴーニュブルターニュ連合の決戦に勝利して国内統一。カスティーリャ(スペイン)艦隊がイングランド海軍の海上封鎖を解除してくれたのが大きかった。やるじゃないか無敵艦隊。そんなこんなで、ゲーム内でフランス統一が完成したのは、16世紀初頭に入ってからであった。
 これでもまだ前半1/3も終わっていないのである。この後、イベリアを統一したスペインと、ドイツで諸侯国を飲み込みつつ成長しているボヘミアと、地中海南岸を完全制圧してしまったオスマントルコと、そして何より宿敵イングランドとの戦いが待っている上に、新大陸への植民とか、国内におけるカソリックプロテスタントの対立の調停とか、いろいろやることが残っているのである。
 一回はじめるとなかなか終わらない上に、何回やっても新しい(超?)展開が発生するので、なかなか飽きないのは本当に困ったものである。ローマ教皇庁神聖ローマ帝国といった複数国家を統合する機構まで用意されているので、複雑な外交ゲームと、箱庭内政と、戦術・戦略ゲームとを同時に楽しめる。
 おかげで寝る時間がなくてもう大変ですよ。これだからパラドゲーは……。