『葉桜の季節に君を想うということ』

「祖父が悪徳商法の被害者となり、保険金詐取目的で殺害された」。後輩の思い人から、相談された主人公、成瀬将虎は、マルチ商法を行う「蓬莱倶楽部」の調査を進める……
トリックを説明しないで作品の話をするのが難しい本。作風としては『ブードゥー・チャイルド』と近しい(って、本人もインタビューで答えていた)。本格ミステリベスト10で「柄刀一とトリックがかぶった」という話が出ていたが、別段メイントリックでもないので、柄刀を読んだからといって気にすることもない。
……というよりも、全編無駄な描写がないので、メイントリックがどこにあったのか明確にするのが難しい作品である。まあ、最後のどんでん返しが一応はメインというべきなのだろうけれど、それ以外で使われているトリックの方が、ミステリ的には「普通」なので。まあメインが、「普通じゃない」からこそ、あれだけの評価を得たのだろうし、カタルシスもあったのだろうけど。