井上雅彦編『キネマ・キネマ』(異形コレクション23)(光文社)

読了。
テーマは映画。映画をネタにすると、前提知識が大量に必要になるのがつらい。一応、最後に「映画解題」として、映画ネタのネタばらしがあることはあるが……
アンソロジーなので気になったものを。

  • 中島らも「コルトナの亡霊」:恐怖描写のないホラー小説。「開始から一時間後に観客が全員逃げ出してしまうホラー映画」という発想が素晴らしい。映画の「大怪獣東京に現る」を思い出した。
  • 朝松健「恐怖燈」:戦国時代を舞台にした映画ネタのホラー小説という、三題噺みたいなホラー。朝松健の史実の使い方は相変わらずめちゃくちゃ上手い。繊細かつ豪腕。すげえ。
  • 友成純一「<ファンタスポルト・レポート>ヴァンパイア・ボール」:ヨーロッパのファンタ(映画祭)のレポートという風を装った小説。祭りの非日常性が、ホラーに直結していることを痛感させる。ファンタについて全然知識がなくても、その楽しさが伝わってくるのは、レポートを書き慣れた友成純一ならでは。
  • 菊池秀行「通行人役」:非人間的なSF的設定の世界での、極めて人間らしい話。今回のアンソロジーの中で、一番いい話ではないだろうか。でも、映画とはあんまり関係なくない?