谷川流『涼宮ハルヒの退屈』(角川スニーカー,ISBN:4044292035)

読了。
第一作『涼宮ハルヒの憂鬱』が、メタSFとして(一部で)評価された谷川流であるが、一度メタ化した世界で物語を再生産するのは極めて困難だ(セカイ系?)。
要するに「何でもあり」の世界になってしまうと、「問題発生→解決」という物語のプロセスだけではテンションを維持できなくなってしまう、ということ。「普通の高校生が、世界の危機を解決する話」ならば面白くなりそうだけれど、「全知全能の神が、どーでもいい問題をその能力で解決する話」では、どうにも話が締まらない。
そんな意味で、『涼宮ハルヒ』の世界を逆手にとって、更にもう一ひねりしようとした「孤島症候群」は極めて秀逸。いろいろな意味で、搦め手から攻めていて面白かった。
まず、SFではなくミステリ仕立てで、次に万能に見えるハルヒの能力の限界を設定し、その上できっちり落ちをつけている、という。小ネタも国内ミステリのアレなネタが多くて、思わずにやにやしてしまったり。
あとがきを読むと、「孤島症候群」は書きすぎて、雑誌掲載の分量をオーバーしてしまったらしい。なるほど納得な力の入りようでした。