貴志裕介『硝子のハンマー』(角川書店)(ISBN:4048735292)

今更ながら読了。『青の炎』以来四年ぶりですか。
「作者初、密室を舞台にした本格推理」というあおりは間違いなく正確で、なおかつ誠実だなあ、と。密室が舞台だし、本格推理の形式だし、貴志裕介にとってそれが初めてであるのもその通り。しかし、だからといって、このアオリは「何が、どう、面白いのか」について一言も語っていない。
ソツがない、と言うべきなのか、見栄えがしない、と言うべきなのか。ストーリーテリングが人並みはずれて上手いのは相変わらずだが、貴志裕介が得意としている「姿の見えない悪意」がなかなか現れてこないため、途中の緊迫感に欠けてしまっている。肝心のトリックもめっちゃ力押しだったし。
うーん、興味深い試みではあったけれども、やはり貴志裕介には本格推理よりも、サスペンスやホラーの方が向いているのではないかなぁ、と。名手であればこそ最も得手とするところで勝負して欲しいというのは、読者のわがままなんでしょうか。