「ゲド戦記」(スタジオジブリ、監督:宮崎吾郎)

 見てきた。言われているほど悪くはなかった。特に、ジブリの美術は世界最強だと改めて確信した。音楽も悪くないし。
 岡田准一も、手嶋葵も、今までのタレント声優と比較して悪いとはいえないだろうし、ゲド役の菅原文太はむしろ上手いと誉めるべきところ(そういえば「千と千尋」でもいい仕事してたよね)。
 が、同時に評判が良くない理由も痛いほど分かった。喩えて言うなら元ネタを知らない同人誌を読まさせられている感じ。伏線を伏線と理解するために、原作を知らなくてはならない部分があまりに多すぎる。もう一人の自分「影」についての説明は完全にスルーだし、テルーが最後に竜に化けるシーンもあまりに唐突で、観客には何が何だか分からなかったろう。何よりもハイタカ=ゲドであることが中盤まで明らかにされないため、話の構造がなかなか把握しにくいのが最大の難点。
 そもそも、それだけの背景を全部詰め込んだら、とても二時間ではおさまらないので、仕方がない、というか、そもそも3巻から映画化するのはどうなのか。素直に「影との戦い」を映画化する、という案はなかったのだろうか。