第6回上海ビエンナーレ(上海美術館)

 テーマは「超設計(HyperDesign)」。「超兄貴」とか「超先生」とか、「超」の字がつくだけでオモシロな雰囲気が出るのはなぜだろうか。
 内容は国内外のアーティストを集めた現代アート展。あまりに点数が多いため、普段は使っていない貴賓室や会議室まで、臨時の展示スペースにしてあるほど、ボリュームがいっぱい。上海市内ではかなり評判になっているらしく、チケット売り場には行列ができていたし、中もかなりの混雑だった。
 現代アートの中身について、いちいち説明できるほど詳しくないので略。その中では、丁乙という人の「時空郵局」という展示(活動)が印象に残っている。過去、現在、未来の誰かにメッセージを書いて壁に貼る、というだけの単純な活動ではあるが、中国人の「オモシロそうなものにはとりあえず参加する」という性格と相俟って、独特の雰囲気をかもし出していた。
 この作品に限らず、観客を見ていると「面白そうなものには集まる」「つまらないものは一瞥すらしない」と、はっきり二極化した対応を取っているのがわかる。光ったり、動いたり、音が鳴ったりするものにはやはり人が集まるし、逆にドキュメンタリービデオや、静物画のようなものには気の毒なぐらい誰も寄り付かない。
 これが中国人の特性なのか、現代アートの宿命なのかは分からないが、美術館で展示したときに、観客に見てもらえる作品が非常に限られているというのは、何か考えさせられるものがある。「誰も見なくてもアートはそこに存在する」のか「誰かが目に留めたときにアートが立ち現れる」のかという議論は、結局今の美学芸術学ではどうなってるんですかね。日本に帰ったら少し勉強するか。
 余談ではあるが徐維政という人の「卜湳遺跡」という展示が個人的にはお気に入りでした。「台湾南部で発掘された旧石器時代の遺跡」についての架空の文明展を内装から展示物まででっち上げる(そしてそのでっち上げ過程のドキュメンタリーすら、会場内で「記録映像」として流す)という、非常に手の込んだ、人を食った展示でした。ああいうイタズラっぽいのは大好き。