乙一『The Book』(集英社)

 荒木飛呂彦ジョジョの奇妙な冒険』(ジャンプコミックス)の第四部のノベライズ。ノベライズといいながらもストーリーは完全オリジナル。あとがきで本人が書いているように、乙一はジャンプノベルスでデビューしている。乙一の分かりやすく歯切れのよい文章は、ジャンプのコミックスをノベライズするのに向いているように思える。
 第四部の舞台となった杜王町で、スタンド使いの殺人者を追う広一たちの物語と、ビルの隙間で一年以上生きていた女性の話がクロスしながら展開する。時系列的には第四部の話が終了した後であるらしい。非常にJOJO的なことに、犯人の台詞やら生き様が格好良すぎて泣ける。
 本筋以外にも、JOJOマニアなら思わずニヤリとしてしまう小ネタが随所に散りばめられていて、乙一のJOJOに対する限りない愛を感じる。トニオのレストランとか、まったくストーリーと関係ないし。あと「魔少年的な」って形容詞は明らかに狙ってますよネ?
 これだけ愛を込めて丁寧に書かれたノベライズは、他に一つ二つしか思いつかない。良作である。