「スカイ・クロラ」(原作:森博嗣,監督:押井守,制作:Production I.G.)

 大人と戦闘と乗物と犬の話。すなわち押井。ほぼ原作どおりなのに、なぜか完璧に押井。原作からし押井守へのラブコールみたいな作品であるので、こうなるのは必然であったのかもしれない。ヒロインの名前が「草薙水素」って、いったいどんな少佐ですか。
 原作と比べて、映画では主人公たちが巻き込まれている「戦争」が仕組まれたゲームであることを強調している。そもそも「キルドレ」の「大人にならない」という属性は、攻殻の「擬体化」による擬似的な不老不死と似た絵がかれ方をしている。他にも、マスコミの使い方や、周囲の「(生身の)大人」の存在など、これまでの押井作品との類似性を指摘し始めたら切りがない。むしろ、改めて森の原作がいかに押井っぽかったを再確認させられた。
 あのラストについては賛否両論ありそうだけど、完全ネタバレになるのと、何であのラストなのかまだ完全に消化しきれてないので、とりあえず保留。メモ的にまとめておくと(以下反転)閉塞した戦争を打開するのであれば、「ティーチャー」との戦闘は避けて通れない。「ティーチャー」の目的は(原作で明かされているのと同じであるなら)「戦争を終わらせないためのジョーカー」であるのだから。しかし同時に、ユーヒチ(というか彼ら)は「兵器としての性能を失わないために」何度も再生させられつつ、知識と経験を蓄積して成長していく(子供だから?)。あの映画版のラストは、「終わらない世界」を終わらせようという話なのか、それとも、どうあがいても終わらないという話なのだろうか。
 ようするに「私、たぶん三人目だから」って話。