「ジルオール〜イニフィニット プラス〜」(PSP,KOEI)

 三大フリーシナリオRPGの一つ*1ジルオールPS2リメイク版のPSP移植(ややこしい)。濃縮された人間関係と、無慈悲な歴史の流れに翻弄される、非常にドライなRPGである。コーエーは時々こういう良作を単発で作るから油断できない。
 基本的に、各地のギルドで仕事を請け負ってこなしていくのだが、胡散臭い仕事に巻き込まれたり、傭兵として雇われたり、困った手いる人を助けたりしているうちに、なし崩し的に世界の危機に巻き込まれていく。レベルを上げれば主人公はいくらでも強くなるのだが、いくら戦闘で強くても全員を幸福にすることは出来ないあたりの、シビアな設定は個人的に好きだね。頑張って育成した仲間だろうが何だろうが、戦争に巻き込まれてあっさり死んだりする。仲良くしていた傭兵仲間が、気付くと敵味方に分かれてて戦わざるを得ないとか。
 一応、「仲間に出来る人間を全部仲間にしてクリアする」と見られるベストエンディングがあるのだが、その条件を満たすのは、普通にクリアするのの数十倍はむずかしい。歴史の展開と各キャラクターの行動を全て知っていて、それを先読みして初めて成功するという、ある意味フリーシナリオなのに全くフリーじゃないプレイをしないと達成できないのである。
 ベストエンディングとは別に、各仲間用のエンディングが30通り以上あるという、マルチエンディングにもほどがある設計。PS2版までは、複数のエンディング条件を満たしても一つしか見れない、という鬼仕様だったが、PSP移植に際して、条件を満たしたエンディングの中から好きなものが見られるようになり、エンディング集めは比較的楽になった(とはいえ、普通のRPGと同じ程度だが)。
 繰り返しプレイされることが前提となっているため、一周するのにかかる時間は15〜20時間と、昨今のRPGの中では短い部類に入る。まあ、エンディングを全て見ようと思ったら最低でも5周はしなきゃいけないんですけどね。
 エンディングを選べるようになったり、新キャラが追加されたのはPSP移植の優れた点だが、逆に移植に際して画面のサイズが考慮されていないのが気になった。PSPのやたらと横に長い画面に対応するため、何と元は4:3のテレビ用に作られていた画面の上下をバッサリと切ってしまっているのである。おかげでダンジョンを歩くとき、画面上部と下部から出現する敵が全く見えなくなっている。あと細かいことだが、メニュー画面で、仲間の表示枠とプレイ時間の表示枠が、上下が圧縮されたために重なってしまっている。実害はないが、インターフェイス面で気になるところであった。
 それ以上に気になるのがロードの遅さ。戦闘に入るたびに30秒〜1分停止し、イベントシーンに入るときにも30秒固まるので、どうしても遊びにくく感じてしまう。最新のPSPだと少しはマシらしいが、我が家の古いPSPではHDインストールをしても解決しなかった。
 イラストが少し古く、ゲーム自体ももっさりした感じがあるので、敷居は少し高いかもしれないが、RPG史上有数の名作であることは間違いない。未プレイの人はいい機会なので手を出してみるのも悪くないんじゃないか。……外出先でちょこちょこ進めるのに適してないので、PSPで出す意味があったのかどうかは微妙だったけどね。

*1:ちなみに他の二つはロマンシング・サガ(スクウェア)とメタルマックスデータイースト)。勝手に言ってるだけですが。