ヤッターマン(三池崇史監督)

 実写版ヤッターマンを見てきた。実写と言うよりCGがメインだったが。
 結論から言うと、非常に出来が良い。個人的には100点満点で89点ぐらい。原作へのリスペクトがちゃんと感じられるつくりだった。TVアニメ版の主題歌を劇中歌に使うぐらいは普通だが、わざわざドロンボーの歌をフルコーラスで流す理由は全くない。TV版ですらフルコーラスでは流れていない。だが、フルサイズでもショートサイズでもほとんど変わらないときに、監督にフルサイズを選ばせた何物か、それが非常に重要だと思うのである。
 主役メカであるヤッターワンヤッターキングにバージョンアップする所も同じである。ヤッターワンのままでも、話の上では全く影響がなかったはずである。でも、ヤッターキングを出したかった(さらに言えば、ヤッターペリカンも出したかった)その心意気っぽい何物かに、我々は痺れるのである(それは、少なくともハイスクールでガールハントにいそしむ孫悟空には見えない何物かだ)。
 さらに言えば、ヤッターマンという話は、実はドロンボー一味の方が出番が多い話なのである。ヤッターマンはいつだって後手後手に回っている。この映画では、そのドロンボー一味の俳優が傑出した演技を見せている。特にボヤッキー役の生瀬勝久の演技はまさに神業。よくもあそこまでボヤッキーを演じきったと思う(よく考えてみると、ボヤッキードロンボーの中でも一番複雑なキャラなんだよね。プライドが高いけどマゾで、女子高生好きだけどドロンジョを崇拝していて、エロだけど純情で)。相方のトンズラーを演じるケンドー・コバヤシも、体当たりの好演(怪演)をみせていた。そして、何よりドロンジョ役の深田恭子。声の迫力では小原乃梨子にかなうはずもなかったが、ドロンジョのお色気シーンを予想以上に上手く演じきっていた。深田版ドロンジョともいうべきオリジナリティを出しつつ、作品世界に完全にマッチしており、今作のMVPと言っても過言ではない活躍である。
 CGやセットの作り方が丁寧なので、普通にアクションモノとしてみても十分楽しめるが、三池監督のヤッターマンに対する過剰なまでの愛を感じ取りたければ、予習していくのがお勧め。いずれにしても、絶対に見て損はしない作品である。
 余談であるが、ラスト30分は滝口順平タイム。「ぶらり途中下車」どころではない順平密度である。あの声にハアハアできるマニアは、耳の穴かっぽじって今すぐ劇場に駆け込まねばならない!