アーシュラ・K・ル=グウィン『ゲド戦記Ⅴ アースシーの風』(岩波書店)(ISBN:4001155702)

読了。感想がまとまってないのでメモ程度に。ネタバレ注意。
終わった。10年ぶりで随分忘れていたが、そこら辺は作者も心得ていて、ちゃんと昔話をしてくれる。ありがたいが、それで随分分量取られていて本筋は短い。一応、『帰還』で張られていたテハヌーの伏線と、(ゲド戦記最大の伏線である)「影の国」に関する伏線が回収され、物語は見事に完結した。『帰還』の時のような、蛇足感、置いてきぼり感、消化不良感はないので、読後感もさっぱり。あと、アースシーの世界で書くとすれば、ゲドの死だけだが、まあ、それが書かれる事はないと思う。
それにしても、ル=グウィンは「無力」を描くのが上手いなぁ。若き王、異国の花嫁、まじない師、半竜の少女……全員が己の無力感をかみ締めさせられる。誰もが「力」を持つものとしてゲドの登場を願うが、それでもゲドは最後の最後まで動こうとしない。無力な者が、無力なりにどうにかするしかない。しかし、物語のカギを握るのが言葉が通じない異国の姫君と、半人の障害者の少女ってのは、フェミニズム小説家の面目躍如といったところか。