法月綸太郎『生首に聞いてみろ』(角川書店)(ISBN:4048734741)

読了。ノリリン8年ぶりの長編。今年は綾辻が書いたりノリリンが書いたり、島田御大が書いたり、新本格の新刊が大量に出てますね。
石膏型取りの技法で「和製シーガル」と呼ばれた老彫刻家が死に、その遺作の首が切断されるという事件が起こる。彫刻の首が切断された理由と、その遺作を巡る遺族の思惑が交錯する中、作家、法月綸太郎が事件の解決に呼ばれる。
起承転結で言えば、承から転への転換がダイナミック。終盤はノリリンらしく、仮説の提示―逆転の構図が繰り返され、いささか間延びしている感もあるが、ロジカルで構成がしっかりしているという意味では、新本格の良い部分が前面に出ている。都築道夫やロスマクにからの引用が多いが、気づかなくても問題なく読めるので安心。
新本格のマニアックさと、一般受けとのバランスを取る熟練の技はさすがですね。一見さんお断りの『暗黒館』とはエライ違いだ。