上遠野浩平『酸素は鏡に映らない』(講談社ミステリーランド)

 日本から送ってもらったのを読了。上遠野を読むのは久しぶり。この前に読んだのは『禁涙境事件』だったかな。
 ちなみに、電撃文庫から出ている「ブギーポップ」シリーズの番外編である。ブギーポップシリーズとはずいぶんご無沙汰しているので、懐かしい思いで読んだ(「ブギーポップが懐かしい」というのもどうかと思うが)。それにしてもいいのか、講談社で番外編書いてて。
 上遠野の小説は、ブギーポップにせよ、ナイトウォッチにせよ、「『世界には自分の知らない『システム』があって、気付かないうちにそれにコントロールされている』ということに気づく」という話が多い。『酸素は鏡に映らない』もその例に漏れない。「世界の支配者」を名乗る青年に唆されて、少年が大富豪・寺月恭一郎の残した遺産を探すうちに、世界のシステムの一部に触れる。
 僕たちは、子供にとって、世界は分からないことだらけで、大人になるにしたがって「世の中のしくみ」ってやつが見えてくると思っている。でも、それは思い込みで、「世の中のしくみ」を作っているもっと大きな「しくみ」があるのかもしれないし、ひょっとしたら、誰かに「世の中のしくみ」があると思わされているだけなのかもしれない。って、そんな話だと思った。
 もう少し真面目に、グローバリゼーションとか、意味と貨幣の体系とか、そういう話もしたければできると思うけれど(上遠野の小説はいつもそうだ)、「少年少女のための」ミステリーランドの作品でそんな話をするのも無粋だろうなあ。
 あと、特撮ヒーローって、やっぱり格好いいよね、って話でもある。