R.D.ウィングフィールド『フロスト気質』(創元推理文庫,ISBN:448829104X)

 有能で下品でワーカーホリックなフロスト警部の活躍を描くシリーズ第4作。
 相変わらずのジェットコースター警察小説。「踊る大捜査線」の青島刑事が両津勘吉に変わっている話だと説明すると分かりやすいかも(?)。今回は、子供の行方不明事件、赤ん坊の連続傷害事件、ドロドロに腐った死体に、一家皆殺し事件。よくもまあ、数日のうちにこれだけの事件を詰め込んだものだ。これらの事件が同時並行的に進行する中、相変わらずフロストはオタオタし、中途半端なまま次から次へと目先を替え、それでいて最後まで事件に食らい付いていく。
 嫌味なデントン署長マレットをはじめとして、レギュラーメンバーも相変わらずで、しかも新キャラの女性刑事リズ・モード部長刑事も加わって、賑やかどころかうるさいぐらい。
 フロストも年(作品)を重ねたせいか、今回はずいぶん丸くなっている。 人情に厚いのは以前からだが、今回は周囲の人間にずいぶん気を遣って、大人の対応をしている。いたずらも他人のシガレットケースから失敬するぐらいで、とんでもないことはやらかさないのが残念と言えば残念。
 錯綜した事件が、一気呵成に解決していく最終盤は圧倒的な読み応え。今年読んだミステリの中では日本・海外を含めてトップクラスの面白さだった。あまりに卑猥な下ネタに抵抗がある人以外にはお勧めできる。