フレデリック・ブラウン『天の光はすべて星』(ハヤカワSF フ-1-4)(ISBN:4150116792)

 2008年に出た新装版のほう。今更買って読んだ。そして、買った理由は新装版が出た理由と同じ。劇場版「天元突破グレンラガン」をみたら、どうしてもむらむらと買いたくなった。しかも、解説はグレンラガンのシリーズ構成をやった中島かずき。解説でグレンラガン最終話の裏話をしているのである。
 ブラウンなのに、ど真ん中直球ストレートなSF。展開がスピーディーで、世界認識の話に少し触れるところは、ブラウンの面目躍如だが、話自体は、夢と、恋と、現実の話。普通、このようなテーマであれば、少年の成長の話になるはずが、なぜか「子供みたいなおっさんの話」になっている。
 主人公のマックスは、読んでいると時々50代後半のおっさんだということを忘れてしまう。よく笑い、よく泣き、よく怒る、まるで子供みたいな人物だが、その背後に抱えている50年分の人生の重みが、最後の最後で顔を出すあたりが、本当に良くできている。
 よく出来た話のついでに、SFマニア向けの小ネタをチクチクと混ぜてあるところも、気付くと面白い。1998年段階で「昔の、もう絶版になった」SFとしてブラウン自身の作品である『発狂した宇宙』が出てきたりする。ブラウン先生、21世紀になっても(この極東の島国でさえ)まだ読まれてますから!(でも予想通り絶版ですけど)
 にしても、マックスのイメージがどうしてもグレンラガン最終話に出てくる、シモン(壮年バージョン)に見えてしょうがない。これが刷り込みというやつか。