東京国際アニメフェア(於・東京ビックサイト)

 ビジネスデーだけど行って来た。
 午前中はコンテンツ文化史学会主催のシンポジウム「変容するコンテンツ文化とクリエイター」を聞きに行く。ゲストは飯田和敏今井哲也本田透(敬称略)。それぞれゲーム・コミック・小説分野の現役クリエイターがリアルタイムの話を、クリエイターでないビジネスパーソンに向けてすることに意義があったと思う。
 ただ、90分という時間的制約のため、ゲストの紹介とコメントに終始し、建設的な議論を広げていく時間が足りていなかったことは残念。3時間ぐらいぶっ通しで、本音でトークしているのを聞いてみたい。
 午後は上海時代の知人と会場を見学。
 ブースが大きく、豪華だったのはアニプレックスと中国文化部。アニプレックスは最全面に「宇宙ショーへようこそ」を押し出していた。「かみちゅ」の舛成孝二監督と倉田英之脚本の劇場版アニメ。いまどき珍しいガチ直球のSFジュブナイルっぽい。6月になったら見に行きたい。
 あと「閃光のナイトレイド」があまりに香ばしい地雷臭をかもし出していた。上海を舞台にした「CANNAN」をもっとヤバくした感じ。4月からの新番組の中では(ある意味で)超期待作である。初回は絶対見よう。
 中国文化部は完全にBtoBに特化したデザインになっていた。今年もアニメ制作基地が増えたらしく、日本からの投資や版権協力を求めたい様子。
 しかし、アニメ作品を「一年に何本」ではなく「一年に何分」作ったかで評価している限り、ストーリー性のあるアニメ「作品」はいつまで経っても作れず、1分いくらの下請けしか回ってこないのではないかと思った。政府の制作基地に対する援助金も分単位で分配されているようだった。機械の部品じゃないのだから、100分の超大駄作よりも5分しかなくても佳作に援助をするべきだと思うのだけれど。
 中国文化部本体だけでなく、中国各地のアニメ制作会社が単独でブースを出していたりして、今年は特に中国関連のブースを多く目にした気がする。代表的なところだけでも、成都市商務局、青島国際動漫産業苑、北京KAKUアニメーションのブースは回ってきた。
 いずれも日本からの出仕と共同制作に特化して、資本金、制作環境、政府との関係などをアピールしていたものの、自作のアニメーションをパブリックに見せようという意欲は感じられなかった。日本のアニメ制作会社も中国もアニメ制作会社も関係なく、一緒に何かしようと思ったら、資本金よりも、政府とのコネよりも、先に見せなきゃいけない「作品」があるんじゃないだろうか?
 アニメ関連の技術展示としては、3D立体映像とAR(強化現実)技術が今年のブームだった。
 NHKとGONZO・東北新社がそれぞれ異なった3D立体映像技術を用いたアニメを展示していた。GONZOはNitro+と協力して『ブラストレイター』を、東北新社は『牙狼』をそれぞれ立体化していた。こちらは微妙にずらした映像をスクリーンに重ねて投影し、偏光レンズの眼鏡で見るタイプの従来型。確かに色彩も鮮やかで立体的に見えるのだけれど、一々メガネをかけないといけないのが煩わしい上に、もともとメガネをかけている人間には、その上にさらに二重にメガネをかけることになり、見づらいのが問題点。
 一方のNHKはテレビ自体に細工をして、微妙に角度をつけたディスプレイを二重に重ねることで、立体感を出そうとしていた(どんな技術なのか、今ひとつ分かりかねた。誰か簡単に説明してもらえるとありがたい)。メガネなしでも立体が映せるのだが、画面を正面から見ないと歪みが激しいのと、視聴者が動くと画面がちらつくのが難点。何より、テレビ自体を買い換える必要が出てくるので、一般に普及させるのは非常に難しそう。
 どちらも一長一短だが、業界全体として3Dアニメへシフトしようという流れがあることを感じさせた。
 もう一つのAR技術については、フジテレビ(ノイタミナ)が、パンフレットをカメラにかざすことで、好きな情報を得られる、という技術のデモンストレーションをやっていた。同様のことをディレクションズ(イヴの時間)のブースでもやっていた。
 現実の「モノ」をカメラで映すことで、現実にアニメーションを加えようという、まさにARそのものの試み。今のところ、QRコードのような固定パターンを認識して、そのパターンの近くにアニメを映すのが限界のようだったが、将来的には特にコマーシャルの分野で有効活用されそう。「短い時間で」「抽象化した情報を」「大量に」伝達する方法として、アニメーションは優れた表現メディアだし。
 他にも松竹がガイキングとキャプテンハーロックを完全3Dで映画化しようとしていたり(しかもハーロックの脚本は福井晴敏!)。ボンズでトレーラーを流していた「ヒーローマン」(スタン・リー原作)が面白そうだったりと、色々あったて、歩きつかれて足が痛かった。
 なぜか帰りに一緒に回ったO氏とプリクラの将来について語って帰宅。おつかれさまでした。