「借りぐらしのアリエッティ」(原作・脚本:宮崎駿)

 いわずと知れた今年のジブリ作品。家の床下に住んでいる小人が、家主の持ち物を少しずつ「借りて」生活している話。でも、消耗品ばかり取ってくるのは、「借りる」のではなく「パクる」と言うのではないんでしょうか? ちなみに、人間の世界は小人にとって危険がいっぱいで、「借り」は「狩り」に掛けていたのだと、途中まで見て気がついた。
 結局、ストーリーは淡々と進むは、複線はあまり張られてないわで、頭を使わず、そのシーンのひとつずつをじっくり鑑賞するのがよいのかもしれない。草の動き、昆虫の動き、アリエッティ自身の動き、水の表面張力などが、どれも「小人の視点」から見たものになっていて、非常に芸が細かい。たとえば、アリエッティが飛び降りるシーンは、どすん、と落ちるのではなく、ふわっ、と空気の抵抗を受けながら降りていく。小人の家でお茶を入れるときには、一滴ずつ大きなしずくがポタリ、と落ちる(人間の世界のように、ジョボジョボとは水が出てこないのである)。リアリティのある動きと、色鮮やかな背景との相乗効果で、見ているだけで楽しくなってくる。
 映画としては、話も設定も微妙だが、アニメーションとしては超一級の作品。アニメの基本は「対象が気持ちよく動く」ことにあるのだとすれば、ここ数年見た中で、トップクラスである。さすがだぜジブリ