虚淵玄『Fate/Zero(4)』(TYPE-MOON)

 読了。
 楽しかった。『Fate』本編より面白い、とはさすがに言わないが、あれだけ広げた風呂敷を、予定の巻数できっちり纏めたのは見事。しかも、終盤に行くにしたがって原作の縛りがますます厳しくなるはずなのに。何より、作者の『Fate』への愛が溢れているのが、二次創作としては最強。
 強いて文句をつけるとすれば、ライダー消滅以降の展開が、ほとんど予定調和的であることだろうか。結果が予め決定されている以上、誰が生き残って、誰が死ぬかはほぼ確定している。したがって、読者としては決戦の勝敗よりは、その過程にこそ興味を持っていたのだが……。
 4巻途中までの戦闘シーンでは、実は虚淵はほとんど戦闘描写をしていない。ほとんどの戦闘が一撃で決まるか、細かい戦闘描写は省き、それ以前の描写「戦うべきか否か」という戦略に対する描写に頁を割いていた。超常の力を描くのではなく、超常の力を使う(普通の)人間を描くことで、作品がとても「人間くさい」ものとなっていた。戦闘シーンが非常に長い原作と比べて、それが独特の緊迫感を出していた。
 それが、最後になって折れた。文章から受ける圧迫感は以前と変わらないが、戦闘描写が増え、作戦を練る余地がなくなった。聖杯戦争の仕組上、終盤になればなるほど戦略の余地はなくなるので、やむを得ないのだが。最終決戦がいずれも力押しになってしまったのは、それまでの経緯を考えれば勿体なかった。
 ひょっとしたら、虚淵にとっての聖杯戦争は、ウェイバーにとって聖杯戦争が終わったのと同時に、決着がついていたのかもしれない。『Fate/Zero』オリジナルキャラの彼こそが、影の主人公であり、同時に作者の分身であったと言ってもよいのかもしれない。