「“文学少女”」(制作:Production I.G.、主演:花澤香菜)

 原作は野村美月の小説。ファミ通文庫から本編7作8冊、短編集3冊、外伝2冊。ライトノベルのオールタイムベストを挙げれば間違いなく十指のうちに入るであろう傑作である。
 しかし、恐ろしいほど空いていた。
 恐ろしいほど空いていたのである。(大事なことなので2度(略
 あ、ありのままに今起こったことを話すぜ……6人で見に行ったわれわれが、観客全体の1/3を占めていた。何を言っているのかわから(AA略

 
 さて、文芸部部長にして、「物語を食べる妖怪」こと天野遠子と、元・作家の後輩、井上心葉の物語。
 原作でいうと6巻の話を中心に、最終巻のエピローグを映像化してオマケに着けている。しかし、原作でも一番エグい「巡礼者」を取り上げて映画化するとは、思い切ったことをする。ネタバレしないように説明すると、登場する女の子が全員腹に一物もって動いているのに、心葉の前だけでは全員いい子ぶる、という何ともやり切れない話である。
 とりあえず、遠子先輩の三つ編みが中に針金でも入っているのが気になるとか、琴吹さんの髪の毛がウルフヘアーを通り越してトゲトゲが生えているとか、微妙に気になるところはあったものの、全体的に綺麗にまとまっていて、見ごたえがあった。
 I.G.っぽくはないが、一つ一つのシーンも非常に丁寧に組まれていて、悪くないと思うのだが、何であそこまで人が入っていないのか。気の毒にすらなる。
 ちなみに、遠子先輩役は池澤香菜じゃなかった気がした。遠子先輩はあの世界では唯一の大人にして、心葉の保護者でもあって「母性」を象徴しているわけで、「守ってあげたくなるような」池澤の声とは真逆じゃないかと思うのだった。じゃあ誰がいいのか、と聞かれて、「皆口裕子じゃね」と答えたら、「ラブプラスでもやってろ!」と言われた。
 あと、朝倉美羽役の平野綾が圧倒的に上手すぎて死ねる。共演者全員を明らかにぶっちぎったクオリティの演義をしていて、そのおかげで作品の中盤が一気に締まった感がある。あれほど上手く視聴者から反感を買える演義ができるとは、「イヤな女」を演じさせたら平野の右に出る声優はいないんじゃないか、とすら思えた。